ごあいさつ

【院長】岡本芳文
・精神保健指定医
・医学博士
・元東北厚生年金病院精神科主任部長
治療にあたっては、インフォームドコンセント(説明と同意)を重視し、特に初診の患者さんには、病気や薬に関する情報を詳細に説明しています。
薬については、副作用の情報を含めて丁寧に説明し、患者さんの了解を得てから薬物療法を行います。未成年の方の場合は、本人だけではなく親御さんの同意を得てから薬物療法を始めるようにします。
当院では患者さんを第一に考えて治療にあたりますので、安心してご来院下さい。
社会不安障害とは
〜仙台市医師会健康だより(2007年2月号掲載)〜
【著者】岡本芳文
社会不安障害(Social Anxiety Disorder。以下SADと略す)とは主に大勢の人の前で話す事が苦手で、不安を感じることであり、それを恐れるためそういう状況を避けようとして出社や通学などができなくなり日常生活に支障を来すことです。他にも人前で食事ができない、偉い人と話をすることができない、人前で字が書けないなどということがあります。こういうときに顔が赤く(青く)なる、大量に汗をかく、頭の中が真っ白になる、めまいがする、動悸がする、息苦しくなる、手足がふるえる、声がふるえる、声が出なくなるなどの症状を伴います。
SADは「内気」や「恥ずかしがり屋」という性格の問題ではなく、治療することが可能な病気です。原因ははっきりと解明されてはいませんが、脳の中にある「神経伝達物質」(セロトニン、ドパミンなど)の何らかの変化によるものではないかと考えられています。
次にSADの診断についてお話しします。
SADの患者さんの元々の性格が必ずしも内気や恥ずかしがり屋とは限りません。以前はこういうことはなかったのにとSADの症状を訴える方もありますし、また、そういう症状があるにもかかわらず、そのことを病気と気付かず別の訴えで受診される方もあります。例えば、不眠やうつの症状を訴えて受診された方にいろいろとお聞きするとSADの存在がわかることがあります。
SADの症状の特徴は、他人に見られている状況での行為や他人との関わりにおいての不安や恐怖が著しく、非合理的であることを認識していながら苦痛が非常に大きいことです。そしてそういう状況から逃れたいと思い回避しようとします。
ではSADであるかどうかの診断、SADならば重症度はどうかの評価を次のように行います。表1ではすべての項目が「はい」の場合にSADの可能性があります。また、表2の「LSAS-J」という尺度で重症度の評価を行います。これは、恐怖や不安を感じやすい「行為状況(自分以外の人がいる状況で何かを行う)」13項目、「社交状況(社交的な状況で何かを行う)」11項目から成っています。
SADと診断された場合には、日所生活上支障なくより快適に過ごすことができるようにするために治療を行います。
治療の方法には主に認知行動療法と薬物療法があり、これらを組み合わせて治療を進めていきます。認知行動療法とは、不安や恐怖が生じるために逃れたいと思っている状況に立ち向かうことで克服する方法です。薬を服用しながら試みるほうが効果的です。薬物療法には主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬や抗不安薬が使われます。抗うつ薬は服用後効果が現れるまで1~2週間かかるため速攻性のある抗不安薬を併用すると効果的です。
薬には必ず主作用と副作用があります。SSRIでは服用後1週間以内に副作用が現れることが多く、主に消化器系の副作用(嘔気、下痢など)や眠気ですが、個人差があり全く副作用の出ない人もいます。また、初めのころに副作用が現れてもその後なくなることもあります。効果は服用して1~2週間後から現れ、次第に症状の改善がみられるようになります。
よって、軽い副作用があり効果がすぐに現れないからといってすぐに服用を中止せずあきらめないことが大事です。強い副作用が現れたときには一時服用を中止して速やかに主治医に相談して下さい。そして症状が十分に改善し安定した後も1年間くらいは薬の量を減らさないで服用することが大切です。速効性のある抗不安薬はSSRIの効果が現れたら中止することもあります。
以上、社会不安障害について簡単に述べてまいりましたが、思い当たる症状のある方は医療機関(病院・クリニック)の精神科、心療内科に相談されるとよいと思います。